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この記事から分かること
- ブロックチェーンのレイヤー2とは
- レイヤー2の概要と分類
- レイヤー2のロールアップとは
※本記事へのコメント・質問等は私のX(旧ツイッター)にDMで送っていただいても大丈夫です。丁寧に回答させていただきます。
レイヤー2とは、「分散性」と「セキュリティ」を損なわずにレイヤー1ブロックチェーンのスケーラビリティ問題を解決する技術を指します。
主にスケーラビリティ問題を抱えるレイヤー1「イーサリアム」上に構築されます。
レイヤー2上で行った取引はレイヤー2上で実行されるため、レイヤー1「イーサリアム」上のスケーラビリティ問題の影響を受けず、ユーザーは多額のガス代を掛けずに快適にアプリケーションを利用できます。
また、取引データの公開と検証はイーサリアムを活用する場合が多く、これにより実質的にイーサリアムのセキュリティを継承しています。
開発者目線では、ユーザーに手数料や取引の承認時間を掛けずに利用してもらうために、レイヤー2上にアプリケーションを構築する選択肢が出てきます。
様々な特徴を持ったレイヤー2が多く開発されており、開発者はアプリケーションのニーズに合わせて利用するレイヤー2を選べます。
この記事を最後まで読むことで、レイヤー2の概要と仕組みが分かり、レイヤー2の有用性・レイヤー1とレイヤー2の関係性が分かります。
本記事の参考文献
本記事は「docs.polygon」「docs.arbitrum」「docs.optimism」の文献を参考に作成しました。
※当メディアでは、金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」で認可を受けており、「関東財務局」に登録されている仮想通貨取引所の利用を推奨しています。また、当メディアの「仮想通貨」は「暗号資産」のことを指します。
暗号資産に関する注意事項は、金融庁・消費者庁・警察庁による「暗号資産の利用者のみなさまへ」を是非ご覧ください。
レイヤー2の分類を決める2つの要素
様々なイーサリアムのレイヤー2が存在しますが、次の2つの特徴により分類が決まります。
- データ可用性を確保する方法
- 取引の有効性を確保する方法
データ可用性\取引有効性 | ゼロ知識証明 | 詐欺証明 |
---|---|---|
オンチェーン | ZKロールアップ | 楽観的ロールアップ |
オフチェーン | バリディウム | プラズマ |
「データ可用性」とは、レイヤー2で提出された取引内容を検証するために、取引データ自体が公開されて利用できる性質を指します。
※データ可用性:Data Avalilability
どのようにレイヤー2上の取引データそのものを検証のために公開するかは、「オンチェーンに保存」または「オフチェーンの保存」の2通りがあります。
オンチェーンの場合はレイヤー1「イーサリアム」を活用して公開しデータ可用性を確保します。
レイヤー2がイーサリアムのセキュリティを継承しているのは、イーサリアムをデータ可用性に利用していることが理由です。
「取引の有効性検証」は、レイヤー2上で実行された取引に不正がないか等の検証で、レイヤー2上で行った取引は全て有効性が検証され証明される必要があります。
例えば、有効性が証明されないとレイヤー2からレイヤー1に仮想通貨を移動し、価値を移動させることはできません。
有効性の検証は、数学・暗号学を活用した「ゼロ知識証明」か、バリデーターが経済的な報酬を対価に行う「詐欺証明」の2通りがあります。
この2つの要素により、以下のようにレイヤー2は分類されます。
データ可用性\取引有効性 | ゼロ知識証明 | 詐欺証明 |
---|---|---|
オンチェーン | ZKロールアップ | 楽観的ロールアップ |
オフチェーン | バリディウム | プラズマ |
したがって、レイヤー2で「ロールアップ」と表現される仕組みは、データ可用性を確保するためにレイヤー1「イーサリアム」を活用している場合を指します。
データ可用性のためにレイヤー1に取引データを書き込む時にイーサリアムの多額のガス代が発生するため、可能な限りレイヤー2上で取引をまとめて圧縮する、すなわち「ロールアップ(巻き上げること)」が必要になるからです。
データ可用性を確保する方法による違いは、次の通りです。
比較項目 | オンチェーン | オフチェーン |
---|---|---|
保存先 | 主にイーサリアム | 中央集権的な組織 |
取引の保管形式 | バッチ処理推奨 | バッチ処理不要 |
処理速度 | 遅い | 早い |
処理コスト | 高い | 安い |
分散性 | 高い | 低い |
セキュリティ | 強固 | 不十分 |
中央集権的な仕組みを採用すると、その分処理能力を上げれますが、分散性が低くなりセキュリティが弱くなります。
取引の有効性を検証する方法による違いは、次の通りです。
比較項目 | 詐欺証明 | ゼロ知識証明 |
---|---|---|
セキュリティ依存 | 検証者の報酬 | 暗号学・数学 |
EVM互換 | あり | あまりない |
開発の難易度 | 簡単 | 難しい |
ファイナリティ | 1週間 | 即時確定 |
取引コスト | 低い | 高い |
ゼロ知識証明は数学の性質を使うため、開発が難しく実装のしやすさに難がありますが、取引が完全に確定するまでが短くなります。
※レイヤー2上での取引はどちらの有効性検証でもすぐに取引が実行されてメタマスク等に処理結果が反映されますが、不正証明ではレイヤー1への資産・価値の移動まで1週間の制限が掛かります。
【具体例紹介】レイヤー2の楽観的ロールアップ
レイヤー2の代表的なロールアップの1つは「楽観的ロールアップ(Optimistic Rollup)」です。
次のレイヤー2で実際に採用されています。
分類表より、データ可用性は「オンチェーン」形式で確保され、取引の有効性の検証は「詐欺証明」で行われます。
データ可用性\取引有効性 | ゼロ知識証明 | 詐欺証明 |
---|---|---|
オンチェーン | ZKロールアップ | 楽観的ロールアップ |
オフチェーン | バリディウム | プラズマ |
詳しく解説していきます。
Arbitrum Oneの楽観的ロールアップ
Arbitrum Oneの楽観的ロールアップの取引の流れは、次の通りです。
Arbitrum Oneでユーザーが提出した取引は「シーケンサー」により実行され、すぐに処理結果はユーザーの画面に反映されます。
このとき取引の有効性検証は事前に行わず(楽観的)、「シーケンサー」は引の実行の裏でレイヤー1「イーサリアム」に取引をまとめてバッチ化して送信します。(データ可用性の確保)
バッチ処理(ロールアップ)しないと、イーサリアムに取引データを送信するコストが膨大になるからです。
その後、有志が担当する「バリデーター」がL1上の取引データを確認し、1週間に渡って提出された取引の状態に問題がないかを事後的にチェックし、問題があれば「詐欺証明」を行う仕組みです
このように、Arbitrum Oneはデータの可用性に「イーサリアム」を使うため、イーサリアムをセキュリティを継承して安全に取引の有効性を検証できます。
DeFiアプリケーション等、取引1件1件が高価値な場合にイーサリアムをデータ可用性として利用する「ロールアップ」は適しています。
Arbitrum Novaはロールアップではない
「Arbitrum」はArbitrum One以外にもレイヤー2を開発していますが、例えば「Arbitrum Nova」はロールアップではありません。
Arbitrum Noveは取引の有効性検証のためのデータ可用性として「イーサリアム」を利用せず、オフチェーンの中央集権的な組織「データ可用性委員会(DAC)」を利用しているからです。
イーサリアムの書き込みによる多額なガス代がないので、ロールアップして取引をまとめる必要がありません。
データ可用性委員会のメンバーがレイヤー2ノード「シーケンサー」から取引データを受け取り、取引の有効性検証と取引データにアクセスできるデータ可用性に関する署名を行います。
シーケンサーがメンバーの署名を集めた「DACert」を作成し、レイヤー1に送信します。
データ可用性としてイーサリアムを使わないため、処理コスト・処理時間に優れていますが、DACを信頼することが前提になります。
従って、ソーシャルアプリ・ゲームアプリ等、大量の低価値取引を処理する必要がある場合に適しているといえます。
レイヤー2「アービトラム」の仕組みは、下の記事でも詳しく解説しています。
当サイトの各レイヤー2の解説記事はこちらです。
仮想通貨に関する注意喚起
仮想通貨に関する法令・注意喚起について知りたい方は、以下の関連ページを一読することをオススメします。
消費者庁の「投資などのお金に関するトラブルや悪質商法について」のYoutube視聴もおすすめです。
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