2025年3月21日、仮想通貨取引所BitgetのCEOを務めるGracy Chen氏にインタビューを実施しました。
2024年で他取引所と比較して大きく伸長した要因や、業界全体が直面しているハッキング・資金流出リスクに対する見解などについて詳しくお話を伺いました。

Gracy Chen氏の詳しい経歴はこちらをタップ
Gracy Chen Bio – 暗号資産(仮想通貨)取引所BitgetのCEO。経営管理、マーケティング、投資の分野で10年以上の経験を持ち、アジアを代表する分散型ウォレットであるBitkeep(現Bitget Wallet)の初期投資家でもある。2022年4月に初代マネージング・ディレクター(MD)としてBitgetに入社して以来、成長戦略をリードし続け、2024年5月にその実績が評価されCEOに昇格したWeb3業界における多様性向上の強力な提唱者であり、UN Women CSW会議の代表者でもある。シンガポール国立大学(NUS)で学士号、マサチューセッツ工科大学(MIT)でMBAを取得。

Bitgetの利用を現在検討している方、Bitget躍進の背景や利用者保護への取り組みを知りたい方は是非最後までご覧ください。
インタビュー実施:ぱんだくりぷと運営者さとう
Bitget CEO Gracy氏のキャリア
さとう:GracyさんがBitget CEOに至るまでのキャリア・経緯を教えて下さい。
Chen氏:私のキャリアは多岐にわたります。最初はテレビのジャーナリスト兼ニュースキャスターとして、世界の経済や技術の動向を取材していました。その過程で、テック業界の著名な人物たちと関わる機会があり、次第に新興テクノロジーへの興味が芽生えました。
その後、フィンテックやVR関連のスタートアップを共同設立し、起業家としての挑戦を通じてテック業界への理解を深めていきました。継続的な学びへの情熱から、MITでMBAを取得し、ビジネスとテクノロジーのスキルをさらに磨きました。
2022年にはBitgetにマネージングディレクターとして参画し、グローバル市場の拡大と戦略的パートナーシップを統括。そして2024年5月、CEOとしてBitgetのビジョンと成長戦略をリードすることとなりました。
仮想通貨に興味を持ったきっかけ
さとう:仮想通貨やブロックチェーンに興味を持ったきっかけを教えて下さい。
Chen氏:2014年頃から、BTC、ETH、DOGEなどに投資を始め、ブロックチェーン領域の可能性を模索していました。分散型の仕組みや、その革新的な可能性に起業家としての関心を強く刺激され、仮想通貨業界への関心が一気に深まりました。
さとう:今現在関心を寄せている銘柄・DApps・NFT等はありますか?
Chen氏:ビットコイン以外では、TONブロックチェーンに特に注目しています。TONは、巨大なユーザーベースを持つプラットフォームにブロックチェーン技術をシームレスに統合し、アクセス性と普及を加速させることを目指しています。
ブロックチェーンが従来のシステムを変革し、より幅広い層にリーチする力を示す好例です。さらに、AIエージェントやRWA(現実資産トークン化)など、注目すべきサブドメインも多数あります。
他取引所と比較したときのBitgetの強み
さとう:Bitgetがの主力・強みとしているサービスを教えて下さい。
Chen氏:Bitgetは、現物取引、デリバティブ取引、コピートレードなど多様なサービスを展開しています。初心者から上級者までをカバーする直感的なUI、高度なセキュリティ対策、幅広い取引オプションが強みです。
特に、成功しているトレーダーの戦略を自動でコピーできる「コピートレード機能」は、取引のハードルを下げ、ユーザー体験を大きく向上させています。
さとう:他取引所と比較したときの優位性はどこにありますか?私たちが特にBitgetを利用すべき理由はどこにありますか?
Chen氏:Bitgetは、ユーザー中心の設計、厳格なセキュリティ、そして透明性へのこだわりを組み合わせることで他と一線を画しています。
特にコピートレード機能など独自のツールにより、初心者でも戦略的な取引が可能になります。
資産保護への取り組みとしては、包括的なセキュリティ体制と運用の透明性を徹底しており、さらにユーザー教育や機能面の革新に注力している点も、信頼できる取引所としての選ばれる理由です。
他取引所と比べて2024年に伸長した要因
さとう:2024年の透明性レポートによれば、Bitgetは2024年でユーザー数が1月の2000万人から12月には1億人に増加、現物取引量も第1四半期の1,600億ドルから第4四半期には6,000億ドルに増加しています。
CCDataによれば、2024年上期の対2023年下期マーケットシェア変化率は+38.4%で業界トップでした。ETFの承認等、業界全体へのポジティブニュースも多い1年ではありましたが、Bitgetが2024年他の取引所と比べてとりわけ伸長した要因は何ですか?


Chen氏:いくつかの要因がBitgetの著しい成長を後押ししました。まず、ユーザー体験の改善を最優先とし、簡素なオンボーディングプロセス、複数の法定通貨ゲートウェイ、そしてローカライズされたカスタマーサポートを導入しました。
次に、リオネル、メッシ選手とのコラボレーションをはじめとする戦略的パートナーシップによって、世界的な認知とブランド力を高めました。


また、セキュリティと透明性への継続的な取り組みがユーザーからの信頼を得て、小売および機関投資家の参加を促進しました。これらの取り組みに、ETF承認など市場全体の好材料が重なったことが、大幅な成長につながりました。
Bitgetの取扱銘柄の増加について
さとう: 2024年でBitgetの取扱銘柄数は600から800以上に増加し、取引ペアは900以上になっています。
ユーザーのニーズに応える一方でユーザーがリスクの高いトークンに触れてしまう機会も増えてしまうと思いますが、新規上場・上場廃止はどのような基準で行っていますか?
Chen氏:Bitgetでは、トークンの品質と安全性を確保するために、厳格な審査プロセスを設けています。
評価基準には、プロジェクトの基本的な構造、チームの信頼性、市場の需要、技術革新、そして規制への適合性が含まれます。上場後も継続的にモニタリングを行い、基準を満たさなくなった場合は、ユーザー保護の観点から上場廃止を検討します。
直近のBitgetの新リリースサービスについて
さとう:PoolX、LaunchX、Bitget Seed、BGBTC、BGSOL等、他取引所と比べて新規サービスのリリースを最新積極的に行っていると思います。特におすすめしたいサービスはありますか?
Chen氏:それぞれのサービスが異なるニーズに対応しています。
たとえば、LaunchXは革新的なプロジェクトのローンチと認知獲得を支援し、Bitget Seedは初期段階のブロックチェーンスタートアップをサポートします。
新興プロジェクトに関心があるユーザーにとって、非常に有意義な機会になるかと思います。自分の投資スタイルや関心に合ったサービスをぜひご活用ください。
Bitgetのセキュリティ・利用者保護
さとう:Bitgetは顧客資産の所有・安全をどのような形で保証していますか?
Chen氏:Bitgetでは、マルチレイヤーの資産保護体制を整えています。
1:1の準備金比率でリアルタイム確認が可能な「プルーフオブリザーブ」を提供し、Merkle Treeシステムを通じてユーザー自身が保有資産を検証できます。


また、業界最大級の4億ドル規模の保護基金を保持し、予期せぬリスクにも備えています。コールドウォレットによる保管、第三者によるセキュリティ監査なども積極的に導入しています。ee
Bybit資金流出時点後のセキュリティの変更点
さとう:• 2025年2月21日、Bybitで過去最大の資金流出が発生しました。
業界全体がSafeといった外部サービスにセキュリティを依存している状況で、同様の問題がまた起きるかもしれないですが、コールドウォレットの利用含め今後のセキュリティ対策・方針に何か変更はありますか?
Chen氏:セキュリティは最重要事項です。現在、Bitgetでは資産の90%以上をコールドウォレットで管理していますが、外部依存を減らすために、社内でのMPC(マルチパーティ計算)ソリューションの導入も検討しています。
加えて、レッドチームによる模擬攻撃、リアルタイムのリスクアラート強化、独立系セキュリティ企業との協業も進め、インフラの強化に取り組んでいます。
Bybit資金流出時の40000ETH貸出の経緯
さとう:Bitgetは同日Bybitに40K ETHを送金しています。Bybitとはライバル的な立ち位置でもあると思いますが、どういった経緯でETHを貸し出すに至ったのでしょうか。Ben氏と直接のやり取りはありましたか?


Chen氏:私自身、Benに連絡を取り、チーム同士でも簡単なやり取りを行いました。
この決定は競争ではなく、業界全体の安定性を重視したものです。Bitgetは財務的に安定しており、連鎖的なリスクが広がる可能性がある中で、エコシステム全体の健全性を守ることを優先しました。
送金は担保付き、期間限定であり、法的契約のもと、リスク管理を徹底した上で実施されました。
BitgetのProof of Reservesの外部監査について
さとう:今回のBybitの騒動により、ユーザー自身で準備金状況を確認できる「プルーフオブリザーブ」の重要性がより業界に認識されたはずです。
プルーフオブリザーブは自己申告ではなく外部の監査会社から評価してもらい公表することが望ましいと思いますが、外部の監査会社を利用する予定はありますか?
Chen氏:はい、現在、グローバルでトップクラスの監査法人2社と最終調整に入っています。
BitgetのMerkle TreeベースのPoR(準備金証明)は以前から透明性があり検証可能ですが、第三者による証明が信頼性をさらに高めると認識しています。
2025年半ばには、監査済みレポートを公開できる見込みです。
資金流出リスクに業界全体はどう向き合うべきか
さとう:仮想通貨を保有するユーザー数や市場規模は毎年伸長していますが、一方で取引所の大規模な資金流出は変わらず定期的に起きてしまっています。


従来の銀行にはない大きなリスクを依然として抱えているが、業界全体としてこの問題にどう向き合うべきでしょうか。
Chen氏:「透明性」「相互運用性」「規制」という3本の柱が鍵だと考えます。
取引所はリアルタイムのPoR導入、統一されたリスク管理フレームワークの実装、そして保管業者や規制当局との標準化された情報共有が必要です。
中央集権的な信頼から、暗号学的検証と実質的なガバナンスへとシフトすべき時です。ただ存続するのではなく、信頼を勝ち取るフェーズに入っています。
さとう:最後にBitgetのユーザー含む、仮想通貨に触れる私たちが各自で行うべきセキュリティ対策や関連するアドバイスがあれば教えて下さい。
Chen氏:大型の資産はハードウェアウォレットで保管し、必ず2段階認証を有効にしてください。シードフレーズや秘密鍵は絶対に共有しないこと。
フィッシング詐欺にも注意し、URLは必ず正しいものか確認し、見知らぬファイルのダウンロードは避けましょう。
そして、目新しさに飛びつくのではなく、必ずご自身で十分に調査した上で行動してください。マーケティングの派手さよりも、「安全性」と「透明性」を重視するプラットフォームを選ぶことをおすすめします。
さとう:本日はお忙しい中ご対応いただきありがとうございました。
Chen氏:こちらこそありがとうございました。
さいごに
Bitgetが2024年に躍進した背景には、取扱銘柄数・新規サービス・パートナーシップの強化だけでなく、セキュリティと透明性の強化から着実にユーザーの信頼を掴んでいったことが分かりました。
準備金状況をリアルタイムで確認できる「プルーフオブリザーブ」については、今後は監査法人からの証明でさらに信頼できるものになるでしょう。
Bitgetが今後どのような戦略で業界をリードしていくのか、引き続き注目していきたいと思います。
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